素麺屋ブログ
2023/05/02 16:17
【お!いしい けんぶんろく】 Vol.12
手延べ素麺三大産地のひとつ・小豆島について
素麺の産地・香川県小豆島は、瀬戸内海に浮かぶ島です。
穏やかな海に囲まれ、風光明媚な景勝地や食にまつわる施設など、見どころいっぱいの観光地でもあります。
お出かけに最適なこれからの季節、足を延ばしてみてはいかがでしょうか?
6月3日・4日には、小豆島で「全国そうめんサミット」が開催される予定。
兵庫県播州、奈良県三輪につぐ第3回となり、関係者だけでなく一般の方にも楽しんでいただける食べ比べなどのイベントが盛りだくさんだそうです。
今回は、小豆島の観光情報や特産品についてご紹介します。
三代目:今回は、夏の需要期を迎える前に今一度、三大産地として整理してみたいと考えました。
そのきっかけは、「全国そうめんサミット」です。
基本的には、小豆島手延素麺組合様が仕切ることになりますが、小豆島で製麺に携わる者として、全く無関係ではありませんし、もちろん、準備や出店でお手伝いもしてまいります。
何よりも楽しみにしているのは、これまでブログでも触れてきた産地の方々にリアルにお会いできることです。
きちんと胸を張って、小豆島手延べ素麺の製麺所三代目として、ご縁をいただく皆さまにご挨拶できるように振り返りの意味も含めてブログに書いてみました。
「全国そうめんサミット」に向けて、小豆島にお越しになる皆さまのご参考になれば幸いです。
<参考サイト>
・第3回全国そうめんサミット2023in 小豆島 公式サイト
※写真はphotoAC「オリーブ公園の風車から見える風景」より
【目次】
① 小豆島でおすすめの観光スポット
② 食の特産品が豊富な小豆島
③ 小豆島が素麺づくりに適している理由
④ 小豆島手延べ素麺と讃岐うどんの違い
⑤ 《産地紹介》富山県・大門(おおかど)素麺
⑥ 《美味しい素麺》手延べレモン素麺 編
① 小豆島でおすすめの観光スポット
小豆島と聞いてどんなイメージを思い浮かべますでしょうか?
島には自然や文化、グルメなど、様々な魅力があふれています。
そんな小豆島の魅力を存分に体感できるおすすめスポットを、厳選してご紹介します。
※営業状況など詳細については、各施設にお問い合わせください。
【道の駅 小豆島ふるさと村】
遊ぶ・体験する・泊まる・食べる・買う、の5つを楽しむことができる公共の施設。
「手延べそうめん館」では、素麺の製造工程を見学することができます。箸分け作業の体験(有料)や試食も。
「全国そうめんサミット」の会場にもなります。
【醬の郷(ひしおのさと)】
小豆島の地場産業である醤油と佃煮の工場が集中するエリア。
明治時代に建てられた醬油蔵の漆喰の白壁が、風情ある景観を生んでいます。
醬の郷にある「マルキン醤油記念館」では、小豆島独自の醬油の製法が紹介されており、醤油を使ったグルメも堪能できます。
※写真はphotoAC「醤の郷」より
【かどや製油 資料展示室「今昔館」】(現在は休止中)
安政5年(1858年)の創業以来、発祥の地である小豆島でごま油をつくり続けるかどや製油さんの工場内にある資料展示室。
ごま油の製造工程や歴史を学んだり、テイスティングを体験したりできます。
【オリーブ園】
全国で最初にオリーブ栽培に成功した、日本のオリーブ栽培発祥の地。
3ヘクタールの敷地には、日本最古のオリーブの原木を含む約2,000本のオリーブが植えられています。
世界各国のオリーブオイルをブレンドしてオリジナルオイル作り体験も。
【エンジェルロード】
1日2回、引き潮の間だけ現れる、島から島へ歩いて渡れる砂浜の道。
大切な人と手をつないで渡ると幸せになれるという言い伝えがあるそうです。
※写真はphotoAC「小豆島エンジェルロード(道が出現する前)」より
【寒霞渓】
国立公園で、日本三大渓谷美のひとつ。
ロープウェイから、美しい溪谷と瀬戸内海の素晴らしい景色を一望できます。
秋の紅葉シーズンは、全国各地からたくさんの観光客の方がお越しになります。
※写真はphotoAC「秋の寒霞渓」より
<参考サイト>
・小豆島観光マップ
https://www.shodoshima-kh.jp/enjoy/map.html
・自然もグルメも楽しめる小豆島のおすすめ観光スポット11選
https://www.knt.co.jp/travelguide/kokunai/052/
・ここは押さえておきたい!小豆島のおすすめ観光スポット22選
https://www.ikyu.com/kankou/arealist8428/
・小豆島ふるさと村 素麺工場・見学体験
https://www.shodoshima.jp/expelience/taiken/visitor/567.html
・醤の郷(ひしおのさと)
https://shodoshima.or.jp/sightseeing/detail.php?id=270&c=2
・マルキン醤油記念館
https://marukin.moritakk.com/kinenkan/
・ごま油資料展示室見学 -かどや製油-
https://shodoshima.or.jp/sightseeing/detail.php?id=163&c=2
・かどや製油の資料展示室 今昔館のご案内
https://www.kadoya.com/enjoy/page04.html
・小豆島オリーブ園
https://www.1st-olive.com/guide/
・エンジェルロード
https://www.shodoshima-kh.jp/angel/
・寒霞渓の魅力
https://www.kankakei.co.jp/miryoku/
② 食の特産品が豊富な小豆島
小豆島には、素麺の他にもいろいろな特産品があります。
「オリーブオイル」「醤油」「佃煮」の3品目には、地域食品ブランドの表示基準である「本場の本物」に認定されている商品もあります。
小豆島の素麺づくりに欠かせない「ごま油」も、島の特産品です。
【オリーブオイル】
日本のオリーブ栽培は香川県が95%を占め、オリーブオイルの生産量も日本一。
小豆島オリーブオイルは、精製油や添加物をまったく加えず、オリーブの実を搾っただけのフレッシュな香りと風味が特徴です。
地元で丁寧に手摘みした新鮮な果実を、すぐさま地元の工場に運び、非加熱でつくっています。
明治41年(1908年)、試験的に植樹されたオリーブが、温暖で雨の少ない小豆島の気候風土で根付き、定着しました。
宮内庁御用達の品目に選ばれたり、世界規模のオリーブオイル品評会で好成績を収めたりしたこともあるそうです。
5月頃にオリーブの花が咲き、6月頃から小さな実を付け、徐々に大きくなり9月の下旬には収穫が始まります。
10月10日に「オリーブの新漬け」が解禁され、いよいよオリーブの旬の季節になります。
農家さんは毎日のように収穫に追われ、翌年の1月頃にはだいたいの収穫が終わり、オリーブオイルの搾油作業を行っているようです。
日本の気候で育つオリーブで作られたオイルはとてもマイルドで、和食にとても良く合い、発酵食品にもピッタリだと言われます。
そうめんつゆに数滴垂らして召し上がっていただければ、清々しい香りとめんつゆのコクが相まって、上質なそうめんを味わっていただけるのではないでしょうか。
【桶(こが)仕込醤油】
小豆島は江戸時代から約400年つづく醬油の産地。
日本の4代醬油産地のひとつでもあります。
色やコク、香りがよい島の醬油は、昔から桶(こが)と呼ばれる巨大な杉の桶を使って醸造(発酵・熟成)されてきました。
桶(こが)の大きさは、上部の直径が約2.2メートル、深さ約1.7メートル、容量約32石(5800リットル)。
古いものは100年以上、新しいものでも50年ほど使いこまれており、100~200種類もの酵母菌や乳酸菌といった微生物が棲み着くことで、味わいやうま味を引き出せるそうです。
化学調味料、合成保存料、合成着色料などは一切使用せず、1~2年かけてゆっくり発酵・熟成させてつくられるものや、一度仕込んだ醤油を基にさらに仕込む「再仕込み醤油」などもあります。
小豆島の醤油蔵では、昔ながらの桶仕込みだけでなく、
「グルテンフリーの醤油」や「オリーブ酵母で仕込む醤油」など、バラエティに富んだ様々な醤油もつくられています。
また、醤油をベースに、出汁の素やめんつゆ、ポン酢、ドレッシングなど家庭になくてはならない調味料の開発も行っておられます。
【佃煮】
太平洋戦争後の昭和20年(1945年)、特産品である醤油を活用した島の経済復興を目的として、佃煮がつくられ始めました。
食糧難の時代に芋のつるを醤油で煮込んだ佃煮を開発したところから始まったそうです。
現在、佃煮の素材は島で数百以上もあるとされますが、「本場の本物」認定品は、30年以上にわたり使われ続けている昆布、のり、わかめ、しいたけ、おじゃこちりめん、きゃらぶきの6品目だけとされています。
具材へのこだわりはもちろん、製造技術に多くの特徴を持つ会社もあります。
最近では、「宇宙食」としての佃煮製造技術を持つ会社から、化学調味料・合成保存料・合成着色料を一切使用せず、自然そのままの味わいにこだわり、心から安心して楽しむことができる佃煮の製造にこだわる、昔ながらの佃煮工場もあります。
【ごま油】
江戸時代末期の安政5年(1858年)、小豆島で創業したのが、ごま油の国内シェア50%以上を占めるかどや製油さんです。
小豆島の手延べ素麺づくりにごま油が使われるからこそ、小豆島で創業されたといえるでしょう。
国内流通する量のほとんどを小豆島にある大規模工場で生産してお
工場は土庄港の近くにあり、風向きによってはごまのよい香りが町中に漂います。
<参考サイト>
・本場の本物 現在の認定品目
https://honbamon.com/product/index.html/page/2
・小豆島ってどんな島?(産業)
https://shodoshima.or.jp/what/industry/
・小豆島町の特産品 本場の本物
https://www.town.shodoshima.lg.jp/gyousei/kakuka/shokokanko/4/899.html
・産業について
https://www.town.shodoshima.lg.jp/kanko/other_info/specialty/3410.html
・「かどや製油」ごま油一筋で159年栄える秘密
https://toyokeizai.net/articles/-/178988
・食の原点 小豆島
http://shodoshima-food.com/?page_id=38
・日本一の生産量「ごま油」
https://furusato-tonosho.furusato-basic.com/features/detail/27
③ 小豆島が素麺づくりに適している理由
小豆島の特産品として忘れてはならないのが、手延べ素麺。
小豆島が素麺の名産地になったのには、いくつかの理由があると考えられます。
ひとつは気候。
瀬戸内海に位置する小豆島は、気候が穏やかで雨が少なく、素麺づくりの最盛期である冬も雪が降ることはほとんどなく乾燥しているため、天日干しでの素麺づくりが行われています。
また、瀬戸内海でとれる塩、以前では讃岐平野で栽培されていた小麦(現在は手延べ素麺作りに合う海外産の小麦を国内で精麦して使用している場合もあります)、良質な清水などの原料が調達しやすかったことも理由のひとつといえるでしょう。
小豆島手延べ素麺づくりに欠かせないごま油や、素麺にベストマッチの醬油が小豆島の特産品であることも、何らかの因果関係がありそうです。
<参考サイト>
・小豆島ってどんな島?(基本・地勢・気候)
https://shodoshima.or.jp/what/
④ 小豆島手延べ素麺と讃岐うどんの違い
小豆島のある香川県にはもうひとつの有名な麺、讃岐うどんがあります。
素麺とうどんはどちらも小麦粉でつくる麺なので、違うのは太さだけと思っている方がおられるかもしれません。
実際は製法が大きく異なるため、それに伴って使う原料や食感なども変わってきます。
具体的にどんな違いがあるか、ご紹介します。
(讃岐うどんにも手延べ製法でつくられたものがありますが、ここでは手打ちうどんと手延べ素麺を比較してご紹介します。)
・油を使うか使わないか
まずは原料について。小麦粉・塩・水は共通ですが、素麺はそれに加えて食用油が必要です。
小豆島手延べ素麺ではごま油を使用しています。
油がえしという製造工程で、麺の表面の乾燥を防ぎ、生地同士がくっつかないように油でコーティングします。
手打ちうどんでは油は必要ありません。
・生地をのばすか切るか
手延べ素麺は、練り合わせた生地に油を塗ってよりをかけ、のばしては重ねて…を繰り返しながら細長くしていきます。
この工程により、小麦粉に含まれるグルテンが一定方向に、重なった地層のように組織されます。
これをさらによりをかけながら細くのばすことで、断面が丸くなり、なめらかな食感とコシ、つるつるとした喉越しが生まれるのです。
時間が経ってものびにくいのも特徴のひとつです。
同じ素麺でも手延べではなく、機械で生地を薄くのばし、細く切って乾燥させる「機械製法」で作られた素麺は、断面が四角く、大量生産に向き比較的安価でできますが、手延べ麺のようなツルツル感はありません。
手打ちうどんの場合は、小麦粉・水・塩を混ぜた生地をこねては熟成し…を繰り返して生地を鍛えます。
それを麺棒で薄くのばして、包丁で切ります。原料から麺に仕上がるまでの時間は、手延べ製麺よりはるかに短いです。
グルテンの組織を包丁で断ち切るため、麺の断面は四角く、しこしこした食感が生まれます。
・太さの違い
素麺とうどんの乾めんについては、日本農林規格(JAS)により、直径1.3ミリメートル未満のものが素麺で、1.7ミリメートル以上がうどん、と太さの規格が定められています。
石井製麺所では、冬季限定で「手延べ半生うどん」を販売しております。
小豆島手延べ素麺の製法で仕上げた、角のないツルツル、モチモチした食感が好評いただいております。
また賞味期限の長い「手延べ乾うどん」は通年販売。
素麺と食べ比べていただける「手延べ太さくらべセット」もご用意しております。
太さによる味わいの違いを、ぜひ実感してみてください。
三代目:よく勘違い?されるのが、讃岐うどんと小豆島手延べ素麺を同じもの?に思われることです。
うどんがあるから素麺がある(うどんを細くして素麺を作っている)と思われる方もいらっしゃいますし、実際にそうだと思っていたというお話をよくお聞きします。
ですが、太さは置いておいて、製法はかなり異なる物です。
どちらが簡単と言うことではないのですが、素麺の場合、細く伸ばす分だけどうしても時間がかかる物だと思います。
また、讃岐うどんは“打ちたて”を味わうのが一番ですが、素麺は完成後も(保存状況はしっかりと管理する必要はありますが)、さらに寝かせることで“古物(ひねもの)”と言われる希少な高級素麺になります。
同じような地域で似て非なる食品が発展するのは、離島である地理的な特徴(ガラパゴス的)なのかも知れませんね。
<参考サイト>
・手打ちと手延べの違いまとめ|麺の原料や製法に食感の秘密があった!
・うどんとそうめんの違い
https://www.flour.co.jp/news/article/070/
⑤ 《産地紹介》富山県・大門(おおかど)素麺
庄川の扇央部から少し下がったところにある、砺波市大門(おおかど)地区で伝統的につくり続けられている手延べ素麺。
「丸まげ素麺」とも言われるユニークな形状が特徴です。
古風な和紙の包み紙ひとつひとつには、製造者の氏名が記されています。
初冬から晩春にかけ、清流庄川の水を使ってつくられる素麺は、鉢伏山から吹きおろす寒風で乾燥させることで、よくしまったコシのあるなめらかな麺に仕上がります。
細くて長い麺が完全に乾かないうちに丸めて仮包装し、さらに10日間かけて本乾燥する、手間ひまかけた素麺です。
天気が変わりやすいこの地で、外干し作業中に雪が降ってきてもすぐ屋内に運べるよう、麺を丸めるようになったといわれています。
ゆでる時には、丸まげ状の麺を2つに割らないと、とても長い素麺になってしまうとのこと。
丸い形状が鍋にすっぽりとおさまるのでゆでやすいそうです。
大門素麺の起源は江戸時代後期にさかのぼります。
大門村の売薬行商である田守三石衛門が加賀藩の御用素麺を持ち帰ったことから、中島次兵衛という村人が加賀に行ってその製法を習得したそうです。
そして村の有志で農閑期の副業として素麺づくりを行うようになったのが始まりといわれています。
最盛期の昭和初期には60数軒の農家で取り組んでいたという記録があるそうですが、現在では12軒前後の農家が素麺づくりに従事しているとのことです。
<参考サイト>
・砺波市じまんの特産品 大門素麺
http://www.tapc.jp/tokusan/tokusan_somen.html
・古来より伝わる手法をそのままに江戸時代から作り続けられている丸まげ素麺
https://www.corezo-mall-tokusyu.com/ookadosoumen
・JAとなみ野 大門素麺
https://www.ja-tonamino.jp/tokusan/ookado?pcview=true
・大門素麺
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%96%80%E7%B4%A0%E9%BA%BA
・大門素麺について
⑥ 《美味しい素麺》手延べレモン素麺 編
昨年、大変ご好評をいただいた「手延べレモン素麺」が5月1日から販売を再開いたします!
2022年5月の発売から夏季限定品として発売し、8月末日までに約4000袋も販売させていただきました。
本当にありがとうございます。
その人気の「手延べレモン素麺」が帰ってきます。
当社独自製法により、小麦と一緒に瀬戸内産レモン果皮を練り上げていますので、麺を口に運ぶたび、ふわっとレモンの香りが拡がります。
食欲の落ちる暑い日でも、食欲をかき立てる優しいレモンの香り。
暑い夏に、ぜひおすすめしたい素麺です。
もちろん、香料・着色料・保存料は一切使用していませんので安心してお召し上がりください。
《石井製麺所オンラインショップ》 https://141seimen.thebase.in/
『お!いしい けんぶんろく』について
本ブログでは、色々な産地を調べたり、食べ方を探求したり、将来的には実際に産地に行って交流を深めたり…そんなことができれば良いなと考えています。まずは勉強からと言うことで、小豆島もそのひとつですが、日本の素麺や麺類について調べながら、様々な素麺の情報を発信できれば良いなと考えています。もし、間違いなどあれば、ご指摘ください。たくさんの方の“素麺のデータベース”になればと考えています。
色々な情報を紐解きながら…なので、間違いや勘違い、伝承だと色々な解釈があったりすると思いますので、優しい気持ちで見守っていただき、一緒に学べる場にできれば幸いです。